
PRODUCT STORY
潮風まとう、メローなピーテッド・ジャパニーズウイスキー
嘉之助シングルモルト PEATED 開発の舞台裏
嘉之助蒸溜所 ブレンダー/品質管理チーフ 芹川直子
2025年、世界最大級のスピリッツ品評会「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション」にて「ダブルゴールド」を受賞した「嘉之助シングルモルト PEATED」。
KANOSUKEらしいメローな酒質の中に、洗練された蒸留技術による「やわらかく、奥深いピート香」、 そして嘉之助蒸溜所が立つ、吹上浜の潮風を思わせるほのかな塩味を重ねたピーテッド・ジャパニーズウイスキーです。
一般的なピーテッドウイスキーに見られる強いスモーキー、ヨード感ではなく、甘酸っぱいアロマ、ピート由来の燻製ベーコンの 旨味と調和しながら穏やかに広がるスモーキーさ。その味わいは、どのような造りとブレンドから生まれるのでしょうか。
嘉之助蒸溜所 ブレンダー/品質管理チーフの芹川直子に、KANOSUKEが目指すピート表現について聞きました。

Q1. 初回発売から1年が経ち、お客様の反応も多く届いたと思います。KANOSUKEのPEATEDの特長としては、一般的な、ピートの力強いスモーキーさ”ではなく“やわらかく奥深いスモーキーさ”は、どのような造りから生まれていますか。
芹川:
ピートの印象は、ピート麦芽という原料だけで決まるものではありません。仕込み原料、もろみ、蒸留、熟成後のブレンドまで、すべての工程が関わっています。
KANOSUKEでは、発酵由来のフルーティーさや、原酒そのものが持つ甘み、旨味とのバランスを大切にしています。
そのため、ピート香だけを前面に押し出すのではなく、果実味や樽由来のニュアンスと重ねながら、穏やかに広がるスモーキーさを目指しました。スモーキーでありながら、カシスのような甘酸っぱさや、燻製ベーコンのような旨味を感じられる酒質を意識しています。
Q2. KANOSUKEの個性でもある3種のポットスチルとワームタブという組み合わせは、PEATEDの個性にどのように寄与していますか。
芹川:
私たちは、形状の異なる3基のポットスチルを使い分けることで、多彩な酒質の原酒を生み出しています。
今回のピート原酒では、再留工程でストレート型とランタン型、2種類のポットスチルを使用しています。さらにワームタブで冷却することで、原料由来の個性をしっかりと回収しながら、ピートの輪郭を保った原酒造りを行っています。
ただ、スモーキーさを強く出すだけではなく、重たくなりすぎないことも大切にしました。旨味や丸みを残しながら、やわらかく奥行きのあるスモーキーさに仕上げる。そのバランスが、今回の味わいにつながっていると思います。

Q3. “ほのかな塩味”や“潮風をまとった印象”は、どこから来ていると考えていますか。
芹川:
ベースとなるバーボン樽原酒と、個性の異なるピート原酒の組み合わせによるものだと考えています。
ジューシーなピート、薬草を思わせるピート、安定感のあるピートなど、複数のピート原酒を重ねることで、味わいの中にほのかな塩味や、潮風を思わせるニュアンスが生まれます。
嘉之助蒸溜所の目の前には、吹上浜が広がっています。自然環境そのものをそのまま味に置き換えるというより、原酒の個性と土地のイメージが重なったときに、KANOSUKEらしいピーテッドの表情が生まれるのだと思います。

Q4. おすすめの飲み方を教えてください。
芹川:
ロック、ハイボールがおすすめです。
ロックでは、温度変化とともに、ピートの旨味やシェリー樽由来の甘み、ほのかな塩味がゆっくりと開いていきます。
ハイボールでは、スモーキーさが軽やかに広がり、食中酒としても楽しんでいただけます。
Q5. どのような食べ物と合わせるのがおすすめですか。
芹川:
鶏の炭火焼や、燻製ナッツとのペアリングがおすすめです。
鶏の炭火焼の香ばしさや旨味は、この商品の燻製ベーコンを思わせるピート香とよく重なります。燻製ナッツの香ばしさや塩味も、ウイスキーの甘みや、ほのかな潮風のニュアンスを引き立ててくれます。
Q6. 再販をするにあたり、ブレンダーとしてあらためてこの商品の魅力をひと言で表すとしたら何ですか。
芹川:
ひと言で表すなら、「毎年、一緒に変化を楽しんでいただけるKANOSUKEのPEATED」です。
「嘉之助シングルモルト PEATED」は、今後も継続的にリリースしていく予定です。
今回の再販では、これまで構成原酒として使用していたマンサニーリャ樽原酒に代わり、オロロソ樽原酒をキーモルトに据えました。ピートを強く前面に出すのではなく、甘みや旨味を伴いながら、余韻にかけてやわらかく広がる表現を目指しています。毎年、キーモルトや原酒の個性を少しずつ見極めながら、「嘉之助シングルモルト」の派生商品として、KANOSUKEらしいメローなピート表現を探求していきます。
繰り返しになりますが、ピートといっても、KANOSUKEでは強くスモーキーであればよいというものではありません。
甘み、旨味、塩味、余韻の伸び方まで含めて、ひとつの酒質としてどう成立させるか。そこに、ブレンダーとしての面白さがあります。
お客様にも、毎年ほんの少しずつ表情を変えていくPEATEDの繊細な変化を味わいながら、嘉之助のピーテッドウイスキーをともに育てていくような気持ちで楽しんでいただけたら嬉しいです。皆さまからのフィードバックも、大歓迎です。
(インタビュー・文:マーケティング部 PR/Communication 丹沢恭子)
プロフィール:
嘉之助蒸溜所 ブレンダー/品質管理チーフ 芹川直子
鹿児島生まれ、京都育ち。東京農業大学醸造科学科で、シュール・リ製法におけるワイン酵母の選択を研究。大手ウイスキーメーカーでの品質管理部門勤務を経て、2018年に小正醸造入社。嘉之助蒸溜所で品質管理・原酒開発・ブレンディングを担当。
