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KANOSUKEを紐解く Vol.6 : 「嘉之助コラボレーションシリーズ01 KANOSUKE × SABUROMARU」始動

今回のExplore KANOSUKEでは、2026年6月18日に発売した「嘉之助コラボレーションシリーズ 01 KANOSUKE×SABUROMARU」の誕生を記念し、嘉之助蒸溜所 マスターブレンダー・小正芳嗣と、富山・三郎丸蒸留所 マスターブレンダーの稲垣貴彦氏による特別対談をお届けします。
「嘉之助コラボレーションシリーズ」は、国内外の蒸留所と原酒交換を行いながら、KANOSUKEだけでは生み出せない新たな味わいの可能性を探求していくシリーズです。その第1弾として誕生したのが、嘉之助蒸溜所と三郎丸蒸留所による「嘉之助コラボレーションシリーズ 01 KANOSUKE×SABUROMARU」です。
テーマは、“Mellow Meets Peated”。
鹿児島・日置で育まれた嘉之助のメローな酒質と、富山・砺波で磨かれてきた三郎丸のピーテッド原酒。その2つの個性が出会い、互いの哲学と感性によって、特別なブレンデッドモルト・ジャパニーズウイスキーが完成しました。
同じく2017年頃にウイスキー造りを本格化させ、次世代のジャパニーズウイスキーを担う同世代の蒸留所として、それぞれの土地に根ざしながら世界へ挑戦を続ける嘉之助蒸溜所と三郎丸蒸留所。
今回の対談では、KANOSUKEにとって初となる原酒交換によるコラボレーションの背景、三郎丸蒸留所との出会い、そしてジャパニーズウイスキーの未来に向けた両者の想いをひも解きます。
聞き手: くりりん氏(ウイスキーブロガー)
◆ それぞれの土地と歴史が育んだ、2つの蒸留所の個性
◆ “Mellow Meets Peated” 原酒交換から生まれた2つのボトル
◆ メローとピートが出会うことで見えた、酒質の違いと可能性
◆ 同世代の蒸留所が描く、ジャパニーズウイスキーの未来
それぞれの土地と歴史が育んだ、2つの蒸留所の個性

くりりん:
まずは、それぞれの蒸留所についてご紹介いただけますでしょうか。
小正芳嗣:
嘉之助蒸溜所は、2017年11月に蒸留を開始し、現在9年目を迎えています。母体である小正醸造は、1883年に鹿児島県日置市で創業しました。もともとは焼酎造りを生業としてきた蔵で、私はその4代目にあたります。
嘉之助蒸溜所があるのは、小正醸造から車で5分ほどの場所にある鹿児島県日置市日吉町です。目の前には東シナ海が広がり、日本三大砂丘のひとつである吹上浜に面した、海辺の蒸溜所です。
私たちのウイスキー造りのコンセプトは、“MELLOW LAND, MELLOW WHISKY” です。
「嘉之助」という名は、2代目・小正嘉之助に由来しています。嘉之助は、日本で初めて樽熟成米焼酎「メローコヅル」を生み出した人物です。私たちは、その焼酎造りの歴史と樽熟成の文化を受け継ぎながら、ウイスキー造りに取り組んでいます。
“メロー”という言葉には、蒸溜所を取り巻く穏やかな環境と、私たちが目指す芳醇で奥行きのある味わい、その両方の意味を込めています。
くりりん:
ありがとうございます。続いて、三郎丸蒸留所の稲垣さん、お願いいたします。
稲垣貴彦:
三郎丸蒸留所は、富山県砺波市三郎丸にある蒸留所です。母体である若鶴酒造は、もともと日本酒造りを行ってきた会社で、ウイスキー製造については1952年に製造免許を取得しています。
当時は戦後間もない頃で、米が不足していた時代でした。米に代わる原料で造る酒類として蒸留酒の研究を始めたことが、三郎丸のウイスキー造りのきっかけです。
私が家業に戻ってきたときには、蒸留所の設備はかなり老朽化していて、このままではウイスキー造りを続けられない状態でした。そこでクラウドファンディングを行い、2016年に蒸留所の改修を始め、2017年にリニューアルオープンしました。
現在の体制になってからは、嘉之助蒸溜所さんと同じく、2017年頃から本格的に歩み始めた蒸留所だと思っています。
三郎丸蒸留所の特徴は、やはりピートです。創業当時からスモーキーなウイスキー造りに取り組んできました。現在も、アイラの海のピートや、内陸のハイランド系のピートなどを使い分けながら、「ピートを極める」ことをコンセプトにウイスキー造りを行っています。
原酒交換から生まれた、2つのコラボレーションボトル
くりりん:
今回のコラボレーションでは、嘉之助蒸溜所と三郎丸蒸留所が互いの原酒を交換し、それぞれの蒸留所でブレンドした2つの商品が生まれました。
まず、KANOSUKEからリリースされる「嘉之助コラボレーションシリーズ 01 KANOSUKE×SABUROMARU」について教えてください。
小正芳嗣:
KANOSUKE側では、今回をコラボレーションシリーズの第1弾として位置づけています。
私たちにとって、他社の蒸留所と原酒交換を行い、コラボレーション商品として発表するのは初めての取り組みです。その意味を込めて、「01」としました。
また、三郎丸さんと嘉之助の出会いを表現するテーマとして、“Mellow Meets Peated” を掲げています。
KANOSUKEのメローな酒質と、三郎丸さんのスモーキーな酒質。その2つの個性の出会いを表した言葉です。
酒質としては、KANOSUKEを主体にしながら、三郎丸さんのピートがしっかりと骨格を支えています。そのうえで、ピートの印象が非常に丸く、包み込むように重なっている。そうした仕上がりになったと感じています。
お互いの個性がうまく合わさることで、まさに“出会い”を感じられる一本になりました。私たちとしても、このような形で初めてのコラボレーションを実現できたことを、大変嬉しく思っています。
稲垣貴彦:
ピーテッド原酒は香りが強いので、どうしてもそちらに引っ張られがちです。ただ、KANOSUKEさんの酒質にはしっかりとした厚みがあるので、ピートときれいに合わさっていると感じました。
焼酎蔵の樽文化が育んだ、KANOSUKEの“メロー”
くりりん:
KANOSUKEの個性を語るうえで、“メロー”という言葉は欠かせません。焼酎蔵としての歴史や樽熟成の文化は、現在のウイスキー造りにどのようにつながっているのでしょうか。
小正芳嗣:
小正醸造では、もともと焼酎を樽に詰めて熟成する文化がありました。
焼酎は、ウイスキーと比べると、樽に詰めるときのアルコール度数が低い状態で貯蔵します。その樽を10年、20年と使い続け、必要に応じて焼き直しながら、長く活用してきました。
その樽をウイスキーに使ったときに、どのような味わいになるのか。始めた当初は、楽しみでもあり、不安でもありました。
ただ、実際にやってみると、これまでにない味わいが生まれました。そこには、まさに“メロー”という言葉で表したくなるようなイメージが広がっていたのです。
くりりん:
稲垣さんから見て、KANOSUKEの個性はどのように映っていますか。
稲垣貴彦:
やはり、南国の花のようなフローラルさ、甘やかさにあると思います。
それが、飲んだときにはっきり出てくるんですよね。多くの日本の蒸留所がある中で、飲んだときにすぐにKANOSUKEだと分かる。それだけ明確な個性が確立されていることは、日本のウイスキー全体を豊かにしてくれる存在だと思います。
同じピーテッドでも、三郎丸のものとは香りの立ち上がり方が異なり、その違いも非常に興味深いと感じています。
同じピーテッドでも、表情はまったく違う

くりりん:
嘉之助蒸溜所でも、ピーテッド原酒の仕込みをされていますよね。自社のピーテッド原酒と三郎丸さんのピーテッド原酒を比較したとき、どのような違いを感じられますか。
小正芳嗣:
本当に違うなと感じます。
KANOSUKEでもヘビリーピーテッド麦芽を使うことがありますが、それでもピートの立ち上がり方はどこか柔らかいんです。強くグッと来るというよりは、やや柔らかく立ち上がり、最後に甘みとともに広がる印象があります。
一方で、三郎丸さんのピーテッド原酒は、良い意味で張りがあり、力強さがあります。さらに奥行きや深みもある。同じピートでも、表情がまったく違うので、今回のブレンディングは非常に楽しいものでした。
くりりん:
同じ“ピーテッド”という言葉で表される原酒でも、蒸留所ごとの違いが明確に出るのですね。
小正芳嗣:
そうですね。蒸留所の環境や設備、発酵、蒸留、熟成によって、ピートの表情は大きく変わります。
KANOSUKEのピートは、どこか柔らかく、甘みに寄り添うような印象があります。三郎丸さんのピートは、しっかりと輪郭があり、力強く奥行きがある。
その違いがあったからこそ、今回のブレンドでは、お互いの個性がよりよく見えたのだと思います。
三郎丸蒸留所から生まれた「三郎丸 龍虎」

くりりん:
次に、三郎丸蒸留所側のコラボレーションボトル「三郎丸 龍虎」について、稲垣さんからご紹介いただけますか。
稲垣貴彦:
三郎丸側から発表するコラボレーションボトルは「三郎丸 龍虎」です。
「龍虎」という言葉には、優れた二者、力ある存在同士が並び立つようなイメージがあります。今回、嘉之助蒸溜所さんと原酒交換を行い、それぞれのウイスキーを発表するにあたって、2つの蒸留所の個性を表す名前として、この言葉を掲げました。
三郎丸としては、これまでも長濱蒸溜所さんなどと原酒交換を行ってきました。今回も、海外のウイスキーイベントなどで小正さんと話す中で、ジャパニーズウイスキーを世界に発信していくうえでは、蒸留所同士が力を合わせることも大切だと感じました。
それぞれの蒸留所の個性をどう伝えていくか。そして、互いの原酒を組み合わせることで、どのような新しい味わいが生まれるのか。そこに今回の取り組みの意味があると考えています。
「三郎丸 龍虎」は、三郎丸らしいスモーキーさを軸にしながら、KANOSUKEさんの持つメローな甘やかさが加わることで、丸みのある仕上がりになっています。お互いの個性が立ちながらも、バランスよく重なった商品になったと思います。
くりりん:
小正さんは、「三郎丸 龍虎」を飲まれてどのように感じられましたか。
小正芳嗣:
三郎丸さんのしっかりとしたピートの中に、KANOSUKEらしい甘やかさがすっと柔らかく入っていて、とても良い形で融合していると感じました。
三郎丸さんの個性が主体にありながら、そこに嘉之助の要素が加わることで、全体として非常に面白い味わいに仕上がっています。こうした取り組みによって新しい出会いが生まれたことを、とても嬉しく思っています。
同世代の蒸留所として、互いに受けた刺激
くりりん:
嘉之助蒸溜所と三郎丸蒸留所は、長い酒造りの歴史を持ちながら、現在のウイスキー蒸留所としては、どちらも2017年頃から本格的に歩み始めたという共通点があります。お互いに刺激を受けてきた部分はありますか。
稲垣貴彦:
私は、嘉之助蒸溜所がお客様に向き合う姿勢や、ウイスキーとともに楽しむ時間を大切にしているところに刺激を受けました。
ウイスキーそのものだけでなく、蒸溜所で過ごす時間、味わう体験まで含めて設計されている。その姿勢は、自分にとっても非常に参考になっています。
小正芳嗣:
私も三郎丸さんの取り組みには非常に刺激を受けています。
クラウドファンディングによって蒸留所を再生し、地元に開かれた場所にしていること。駅から近い立地を生かして、多くのお客様を蒸留所へ迎え入れていること。そうした姿勢にとても共感しています。
また、オリジナルの蒸留器を開発するなど、造りの面でも独自の挑戦をされています。地域に還元しながら、ウイスキー文化を広げていこうとする姿勢には、多く学ぶところがあります。
原酒交換が広げる、ジャパニーズウイスキーの可能性

くりりん:
今回のコラボレーションは、2つの蒸留所の商品というだけでなく、ジャパニーズウイスキー全体を盛り上げていく取り組みでもあると思います。その意味について、どのように考えていますか。
稲垣貴彦:
ファンの方にとって、2つの蒸留所の原酒が合わさったときに、どのような味になるのかという楽しみがあると思います。
ウイスキーの魅力のひとつは、ブレンドによってまったく違う香りや味わいが生まれることです。今回のような取り組みによって、お互いのファンが相手の蒸留所に興味を持つきっかけにもなると思います。
この10年ほどで、日本の蒸留所は大きく増えました。その中で、さまざまな個性が生まれ、互いに刺激し合うことが、ジャパニーズウイスキー全体の多様性につながるのではないでしょうか。
小正芳嗣:
それぞれの蒸留所が、自らの個性を磨き、発信していくことはもちろん大切です。
一方で、こうして蒸留所同士が一緒に話題をつくることで、お客様には飲み比べを通じて、それぞれの味わいや個性の違いをより楽しんでいただけるのではないかと思います。
今、私たちは日本から世界に向けてウイスキーを発信しています。その中で、蒸留所同士が協力し合い、互いの個性を重ね合わせることは、ジャパニーズウイスキーという市場や産業全体を、より強く、持続的なものにしていくことにもつながると考えています。
今回の取り組みを一過性のものに終わらせるのではなく、継続的に発信していくことが大切だと感じています。
コラボレーションシリーズの今後の展開
くりりん:
KANOSUKEにとって、今回の「嘉之助コラボレーションシリーズ 01 KANOSUKE×SABUROMARU」は、蒸留所同士で原酒交換を行った、KANOSUKE初のコラボレーションシリーズとなりました。今後の展開について、どのように考えていますか。
小正芳嗣:
今回の原酒交換やコラボレーションをひとつのきっかけとして、今後も国内外でさまざまな活動を広げていきたいと考えています。
嘉之助蒸溜所は、焼酎蔵としての歴史や鹿児島の自然環境を背景に、樽熟成の文化、そしてメローな酒質を磨いてきました。今回、三郎丸さんのピーテッド原酒と出会うことで、私たち自身もまた新しい可能性を感じることができました。
稲垣貴彦:
今回のような取り組みを通じて、それぞれの蒸留所を知っていただくことが、日本のウイスキーをより深く知ることにつながると思います。
三郎丸としても、スモーキーさを軸にしながら、酒質の面でまだまだできることがあると考えています。今後も、蒸留所としての個性を磨きながら、新しい取り組みに力を入れていきたいです。
Mellow Meets Peatedに込められたメッセージ
鹿児島・日置で育まれた嘉之助のメロー。
富山・砺波で磨かれてきた三郎丸のピート。
異なる土地、異なる歴史、異なる個性を持つ2つの原酒が出会うことで、互いの輪郭はより鮮やかに浮かび上がりました。
“Mellow Meets Peated”。
それは、嘉之助のメローと三郎丸のピートが出会った今回のテーマであり、ジャパニーズウイスキーの新たな可能性を示す言葉でもあります。
「嘉之助コラボレーションシリーズ 01 KANOSUKE×SABUROMARU」は、KANOSUKEにとって初めての原酒交換から生まれた一本です。この商品が、2つの蒸留所の個性を知るきっかけとなり、日本のウイスキーの多様性を楽しむ新たな入口となることを願っています。
今後のコラボレーションシリーズの展開にも、ぜひご注目ください。
場所協力:
J’s Bar(東京都・豊島区池袋)
登壇者:
小正芳嗣
小正嘉之助蒸溜所株式会社 代表取締役社長 / 嘉之助蒸溜所 創業者・マスターブレンダー
稲垣貴彦氏
若鶴酒造株式会社 代表取締役社長 / 三郎丸蒸留所・マスターブレンダー
